小規模宅地特例の緩和は今年1月から
2014/1/09 相続税
平成25年度税制改正に伴う、新相続税の施行は平成27年1月からですが、同時に決定した「小規模宅地に係る二世帯住宅の要件緩和」と「終身利用権付老人ホームに入居時の要件緩和」については、平成26年1月発生の相続から適用されます。
従来認められていなかった「完全分離型」の二世帯住宅に関しても、同居とみなして小規模宅地の特例が認められるようになります。
この際、注意しなければならないのは、建物を親世代・子世代で区分登記すると、相続対象の親世代の持分に対応した分のみが特例対象に限定されてしまうということです。
小規模宅地の特例を前提とした場合には、建物を必ず「共有持分」で登記しなければないません。
また、被相続人が終身利用権付き老人ホームに入居していた場合でも、その住居を貸付に供していない限り、小規模宅地の特例とする道が開けました。
相続税大改正を来年に控えて、1年早く納税者にとっては「有利改正」が行われます。
扶養義務者からの生活費等贈与Q&A
2014/1/08 相続税
国外財産調書制度の1月施行
2014/1/07 相続税
12月31日時点の国外財産の合計額が5千万円を超える居住者(非永住者除く)に対し、国外財産の種類や価額を記載した「国外財産調書制度」の提出義務が平成26年1月1日に施行されました。
国外財産調書の提出期限は3月17日(15日が土曜日のため)で、この期限までに正当な理由なく調書を提出しない場合には、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されるという重たい制度です。
また調書の提出がある・なしによって、その財産に係る所得税や相続税の過少申告加算税の税率も変わってきます。
従って、5千万円に届くかどうかが微妙なケースでは、「とりあえず出しておく」というのが正解だと思われます。
太陽光発電の即時償却による株価変化
2013/10/21 相続税
太陽光発電設備については即時償却が認められ、税制上の優遇措置が認められることは周知のとおりです。
この優遇税制を使うことで、会社の利益が圧縮できたため、自社株を低めに評価でき贈与などのチャンスだと考える方もおられると思います。
類似業種比準価額の計算の所得計算上、即時償却による損金計上分はマイナスして計算して構いません。この点、実務家の間で若干の不安があったようですが、問題なくマイナスして計算することができます。
ただし純資産評価額を計算するに当たっては、簿価ゼロのまま評価してはいけません。
定率法で償却したものとして、別途に評価しなおす必要があります。
自社株贈与などのチャンスであることは間違いないので、詰めの部分で間違いがないように気を付けたいものです。
最高裁判決を受けた国税庁の通知
2013/10/10 相続税
最高裁判決が、非嫡出子の差別を違憲と判断したのを受けて、課税庁も相続税法の取扱を変更することを決定したことは既報の通りです。
国税庁のHPに詳細が記載されていますのでご紹介します。↓
nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/
通常の実務において気を付けるべきは、9月5日以後に「申告期限」が到来するものについては、従来と取り扱いが異なると考えておけば間違いないでしょう。
ところで最高裁判決は、非嫡出子に対する取り扱いが違憲状態となっていたのは、平成13年ごろからであると判示しています。にもかかわらず、税務の取り扱いが平成13年まで遡って更正の請求などを認めていないのは、同判決に「確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものでない」旨の記述があるからだそうです。
個別の事案ごとに検討すべきことが多すぎるので、一律に過去に遡っての判断は難しいと考えたのだと思います。
9月5日以後申告の相続から取扱変更
2013/10/03 相続税
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を、「違憲」とする最高裁判決を受けて、国税庁は相続税の取り扱いを改めることを公表しました。
判決翌日の9月5日分以後の申告または処分から、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等なものとして、相続税額の総額を求めることになります。
従来は嫡出子の相続分が相対的に大きく、税率の高いところで計算したうえで、総額計算を行っていたのに対し、今回の改正で税率がフラットで相対的に低率を適用できる可能性があるため、相続税額総額が下がるケースも考えられます。
ちなみに、9月4日以前に申告したものについて、最高裁判決を理由に更正の請求をすることはできない、としています。
非嫡出子差別違憲判決の影響
2013/9/11 相続税
非嫡出子に対する相続分を2分の1とする民法の規定が違憲であるとした、9月4日の最高裁判決の影響が注目されています。
判決文は、判決以後の相続と判決時点で未分割となっている事案に関してその効力が及ぶとされ、さかのぼって過去の事案が違憲とされるものではないとしています。
しかし、非嫡出子側からは「違憲無効状態の民法」にもとづいて行われた遺産分割協議そのものが、「錯誤により無効」と主張されることが十分考えられます。
仮に錯誤無効の訴えが認められた場合、遺産分割協議のやり直しとなり、減額された側は「更正の請求」、取得財産の増加した側は「修正申告」となります。
問題なのは、遺産分割のやり直しは税務上「贈与」として認識され、財産の取得分が増加した側に「贈与税」が課されるという点です。
ただし、財産の取得分の減る方つまり嫡出子側に「贈与の意思」があるとは到底考えることはできないため、従来の常識通りに直ちに判断できないようです。
近い将来、民法は改正されるでしょうが、税務上は単純に「将来の問題」とは言えないかもしれません。
相続税節税の落とし穴
2013/7/05 相続税
相続税法改正の影響で、首都圏を中心に二世帯住宅への関心が高まっているというニュースが大きく取り上げられていました。
4階建てで賃貸借スペースもあり、同居による小規模宅地特例と、貸家評価の減額などをねらった物件が紹介されていました。
首都圏の一等地ならば、大変な相続税節減効果が見込めるでしょう。
ところで、このような事例を聞くにつけ案じるのは、相続人の平等は保たれているのか、不満を抱く相続人はいないのか、という点です。
最近の裁判事例で、次のようなものがありました。
遺言に基づいて、ほとんど唯一の相続財産である賃貸建物の全部をひとりの相続人が相続しました。ところが他の相続人が遺留分減殺請求を求める訴訟を起こし、これが認められて建物は結局、共有持分となったそうです。
当初全部建物を取得した相続人は、この判決の翌日から2か月以内に税務署に対して更正の請求を行うべきだったものを、これを徒過したため払い過ぎの相続税を国から返してもらう機会を失ってしまいました。
そこで、この相続人は、もう一人の(共有持分を認められた)相続人に対して、「不当利得返還請求権」に基づく相続税負担の請求をする訴訟を起こしました。
東京地裁はこの5月、原告である相続人が税務署に対する更正の請求を徒過した時点で、相続税の課税関係は確定しており、不当利得返還請求権に基づく相続税負担分の請求権は認められない旨の判示をしました。
事後的な対応のまずさもあったとはいえ、やはり遺言のありかたや相続実務のスタート時点で問題があった事案だと思います。
数字ばかりを追う節税が、いかに危険であるかを物語る事案です。
二世帯住宅の「区分登記」に注意
2013/6/25 相続税
二世帯住宅の小規模宅地評価減特例について、来年1月発生相続から要件が緩和されることは既報の通りです。また建物について親子で「区分登記」した場合には、親所有分として登記した分に対応する土地のみが評価減の対象になるので登記のあり方には注意をしなければならないことは、前回お知らせしました。
実務家の間では「建物区分所有法1条」には、独立して居住の用に供することのできるものがあるときには、独立して所有権の対象とすることが「できる」、という規定ぶりなので、実際に区分登記していなくても、区分登記できる状態の建物であれば、「建物区分所有法1条に規定する建物」に該当し、緩和の対象外になるのではないかという意見が上がっていました。
財務省はこれに対して、「区分登記できる状態にあるかどうか」ではなく、実際に「区分登記しているかどうか」によって、小規模宅地特例の適用の適否を判断するという見解を明らかにしています。
やはり、登記のあり方に要注意という結論に到達します。
二世帯住宅の登記上の注意
2013/6/13 相続税
小規模宅地の特例で二世帯住宅の構造が、内部で行き来できるようなものでなくともよいなど要件が緩和され、来年1月からの相続に適用されます。
朗報ではありますが、建物の登記の仕方によってはで適用される地積に違いが出る模様ですので、この点に特に注意が必要です。
改正政令では、一棟の建物が「建物区分所有法第1条の規定に該当する建物」である場合には、被相続人所有部分のみが小規模宅地特例の対象になることが明らかにされています。
したがって、1階部分が親世代所有、2階部分が子世代所有などと区分登記を行った場合、1階部分に対応する地積のみが小規模宅地特例の対象となります。
二世帯住宅を登記する際には「共有登記」にすることが無難であるといえます。