医療費控除の手続き 国税庁HP
2018/1/11 所得税
国税庁は1月4日、HP上に「医療費控除に関する手続きについて(Q&A)」を掲載しました。
国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/iryohikozyoQA.pdf
平成29年度税制改正で同年分以降の所得税の確定申告において、医療費控除の適用の際に、医療費の領収書を確定申告書への添付又提示から、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」の添付へと改正されたことを受けたものです。
Q&Aでは、主に医療費控除の明細書に代えて一定の記載があることを条件に提出が認められている、医療保険者が被保険者に交付する「医療費通知」の注意点を中心に掲載されています。
例えば、医療費について自治体の助成、未収金などにより、窓口で自己負担額の減免があるにもかかわらず、その金額が「医療費通知」に反映されていない場合は、減免分を除く実際に負担した医療費の額に基づいて医療費控除の額を計算することになります。
そこで「医療費控除の明細書」の「1 医療費通知に関する事項」のうち「(2) (1)のうちその年中に実際に支払った医療費の額」欄へ実際に支払った医療費の合計額を記載し、「医療費通知」に減免分がある旨を付記した上で、「医療費控除の明細書」と「医療費通知」を確定申告書に添付する必要があるとしています。
被相続人の居住用財産の譲渡特例
2017/10/11 所得税
平成28年度税制改正で、相続によって取得した被相続人の居住用不動産の売却にも、3千万円控除の道が開けるようになりました。
ところが相続のご相談で、その売却物件が「昭和56年5月31日以前に新築」の要件を満たしておらず、3千万円控除の特例が使えないケースが多いことにも気づきます。
日付によって特例適用に差があるのは、昭和56年6月の建築基準法の改正により耐震基準が大きく改善されており、それ以前の建築については「空き家」のリスクが大きく、特例による救済が必要という政策的な判断からです。
さて、昭和56年5月31日以前に新築した物件で、未登記の場合には、「確認済証(同日以前に交付されたもの)」や、「検査済証(交付年月日が同日以前のもの)」、「建築に関する請負契約書」により証明できれば特例の適用が認められます。
また、新築日は昭和56年5月31日以前だが、その後増築したことが登記事項証明書に記載されている場合でも、3千万円控除の特例の適用は可能です。
類似業種比準方式の変更
2016/12/19 医療法人・医療関係
平成29年度税制改正の中で、特に注目される項目のひとつとして、非上場株式の類似業種比準価額の計算方式の変更があります。
配当・利益・純資産の比重を1:1:1に変更し、分母を3にするというものです。
これでは、所得軽減の株価に対するインパクトが減少してしまいます。
さらに厄介なのが、持分のある医療法人の出資評価です。
大綱では言及されていませんが、利益:純資産の比重が1:1に変更され、分母が2に変わると、出資評価の減少効果が激減します。2要素以上ゼロにならない前提で、評価対象年度の利益をゼロとした場合、分母が4のときに比べて分母2では、出資評価は2倍に跳ね上がります。贈与税を払ってでも「出資持分なし」に移行しようとする医療法人のハードルが格段に高くなってしまうのです。今後の具体的な改正に注目したいと思います。
本人交付用の源泉徴収票にマイナンバー記載なし
2015/10/13 所得税
10月2日国税庁より、本人交付用の源泉徴収票や支払調書などには、マイナンバーを記載しないよう取り決めた旨の発表がありました。
国税庁HP
↓↓↓
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/mynumber_gensen.pdf
源泉徴収票は住宅ローンをはじめ各種ローンの申し込みや、奨学金の申請、保育所への提出など、「民」への提出の機会の多いものです。
これらすべてについて、マイナンバーのマスキングを施すなどの措置がなく第三者が書類を提出すれば、「情報漏洩」に該当するところでした。
今回のマイナンバー不記載の決定によって、上記リスクは軽減されることになります。
本人交付用で記載が不要になるのは次の書類です。
・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
・上場株式配当等の支払に関する通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書
超富裕層に対する重点調査
2015/8/17 相続税
国税庁は現行事務年度から、東京、名古屋、大阪の3局にプロジェクトチームを設置し、資産規模の特に大きい「超富裕層」に対する管理を強めることにしています。
調査を行う上で指針となる「試行通達」をこの事務年度中(H27.7~H28.6)に示したうえで、来事業年度(H28.7~H29.6)から取り組む予定とのことです。
わずかに漏れ聞こえる情報では、A・B・Cに3区分された対象者により国税当局の対応が異なるという話ですが、その資産規模の分類基準などは公にされていません。
なお、この試行通達は国税局のHPなどで公表させることのない、完全な内部文書扱いになる予定とのことです。
財産債務調書の提出義務者
2015/2/17 相続税
平成27年度税制改正に盛り込まれた「財産債務調書」の提出義務について、その解釈にばらつきがありましたが、以下のように解するのが正解だそうです。
1. その年分の所得金額が2千万円超であること
という条件に当てはまり、
「なおかつ」
下記2「または」3の条件に当てはまる人は提出義務者である。
2. その年12 月31 日において有する財産価額の合計額が3億円以上であること
3. 同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること(つまり有価証券等の保有額が1億円以上であること)
従来は、所得2千万円超である人は「財産債務明細書」を提出することになっていましたが、平成27年度分の確定申告(来年3月申告期限分)から「財産債務調書」の提出に変わり、提出しない場合には所得税・相続税の加算税にペナルティが付くことになります。
その提出義務者が、従来の2千万円超の「高所得者」ではなく、2千万円超の高所得者であり、なおかつ上記2または3の条件に合致する「資産家」に絞られることになります。
提出義務者に制限を加えたうえで、提出しない者へのペナルティ(提出した者への軽減も)を課して、手続きを厳格化するという改正です。
住宅取得資金贈与と個人間取引
2015/2/06 相続税
平成27年度税制改正大綱で、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税措置が、平成31年6月まで延長され、拡充されています。
大綱では消費税率引き上げ前の駆け込み需要や、引き上げ後の受注落ち込みを抑制する目的で、引き上げ前後の期間(平成28年10月~平成29年9月)には、3千万円の非課税枠を設けるなど、大胆な措置を講じています。
さて、大綱では消費税率が10%である場合と「それ以外の場合」とに分けて、時系列の非課税限度額一覧表を掲げています。
この「それ以外の場合」に消費税率引き上げの平成29年4月以降の時期も含まれることが何を意味するのか、一目では判然としません。
この「10%が適用される以外の場合」とは中古住宅の個人間売買を想定しているのだそうです。売主が「事業者」でない個人から住宅を取得した場合、消費税10%適用外となるので、このようなケースにまで大幅な非課税枠を設ける必要はないとの判断のようです。
さて問題は、この法の趣旨を理解せずに3千万円の非課税枠を前提に、親が取得資金を負担してしまった場合のことです。「良質な住宅用家屋」を個人間で取引した場合には、1200万円の非課税枠しか使えず、差額の1800万円に贈与税がかかることになります。
十分な注意が必要とされるところです。
渡る世間に税制改正 (その八)
2015/1/24 相続税
勇は5人姉妹のうち誰かが、義父と喜んで同居すると言い出すとは思えなかったし、断られると分かって義父が相談を持ちかけているとも考えられなかった。大吉のプライドの高さはよく知っているからだ。
そうすると、最近、大吉の店に泊りがけで仕事をすることもある日向子の顔が、突如頭に浮かんできた。
純粋培養で育てられて、自分の人生を打算抜きで真っ直ぐにしか見ることのできない、あの日向子に、まさか大吉を籠絡するような企みが浮かぶはずはない。勇はそう思うのだったが、どうしても日向子の顔が頭から離れないのだ。
いや、待てよ。日向子の母親の長子はちゃっかり者で、こういう「利に聡い」話に絡んできそうだ。これまでの物語展開からすると、ちょうど彼女に出番が回って来る頃だ。そう言えば、いかにもそのような気がする。
もうこの物語に誰が登場して、自分が誰なのかも判然としなくなってきた。頭の中が混沌とした小宇宙のように渦巻いている小島勇の正月であった。
(完)
というわけで、筆者にはこれ以上の物語を続ける「堪え性」が無いのですが、どうも、このような愉快な想像をかき立てる、湧き立つような気分が、去年の暮れあたり財務省の一室に横溢していたのではないか、と思うのです。
「児玉くん、この結婚資金300万てあたり、冴えてるねー。」
「先輩、茶化さないでくださいよ。出来るだけ資金使途はバラすようにっていうお達しでしたから、ちゃんと国会図書館で統計を見てきたんですから。」
「いや、悪い悪い。お勤めご苦労様です。」
なんていう明るい会話が、霞が関の煌々と明かりの灯る執務室で、展開されていたのだと思います。いや、そうに違いありません。
渡る世間に税制改正 (その七)
2015/1/20 相続税
大吉の表情に一気に困惑の色が広がった。
孫の日向子はどうしようもなく可愛い。しかし、あの子だけを特別扱いするつもりなど毛頭なかった。ましてや5人姉妹の娘たちの人間関係がようやく落ち着きかけた今になって、こんな話を娘たちに出来る道理はなかったからだ。
それにしても、まだ少年のあどけなさを時折見せる高木に、これほどの説得力と威圧感とを持たせてしまう相続税の仕組みというのは、冗談ではなく魔界の妖力を帯びているのではないか、と背筋の寒くなる思いもする大吉であった。
そういう経緯があって、大吉はこのたぐいの話に動じない五月に、二世帯住宅の話があることを話す気持ちになったのだ。もちろんそこに同居するのが日向子かもしれず、その場合には遺言でもって日向子を相続人に加えなければならない、などということはおくびにも出さなかった。
「営業の高木くんが、俺の体の自由が効かなくなった時のことなんかを心配してな。誰か同居してくれる人がいれば安心でしょう、なんてことを言うんだよ。」
娘たちの誰一人として、すすんで同居すると言いだすはずがないと大吉なりに考えたからこそ、「じゃあ、板前修行の日向子がいいんじゃない」と娘たちの方から言ってくれるかもしれない、そういう目論見もあった。
相続税対策の営業戦略とは気がつかない五月は、誰が父さんの身の回りの世話をすることになるのかしら、という具合に、勇に相談をしてきた。これを聞いた勇は自分自身の生前贈与のドタバタもあったので、これは怪しいとピンときたのだ。
(続く)
渡る世間に税制改正 (その六)
2015/1/17 相続税
「いずれ日向子さんがこの店を引き継げば、大将も肩の荷が降りますよね。そのうえ日向子さんがこの家で生活するようになったら、大将もどれだけ心強いことでしょう。日向子さんが将来結婚してご夫婦で同居するようになると、それはもう賑やかでしょうね。」
妻に先立たれて以来、ずっと張り詰めた気持ちでいた大吉にとって、孫の日向子が同居してくれるという話は、まるで心の奥の氷塊をじんわりと溶かしてくれるような、甘美な効果をもたらした。
高木は畳み掛けるように続ける。
「そこで、二世帯住宅のご提案なんです。平成26年から税制上の規制が緩くなって、外階段で繋がっている様なほとんど別生活の建物でも税制の優遇が効くようになり、なんと居宅部分の土地の評価が80%も減額されてしまうんです。そのうえ、事業を営んでいる場合には、その事業を引き継ぐひとが相続されたら、その事業用部分の土地評価についても80%の減額が効きます。大将は土地評価の値上がりを気にしておられたから、80%オフは夢のような朗報ですよね。」
もう騙されてはいけないと、心に決めたはずの大吉の気持ちは、80%オフの一言で大きく揺り動かされた。
高木はここが攻めどきだと見極めたらしく、深呼吸をして声のトーンを変えた。
「そう、夢のような話なんです。しかし、ひとつだけ越えなければならないハードルがあります。一緒に同居してくれたり、事業を引き継いでくれたりするひとは、法定相続人である必要はありません。大将の親族であればそれで問題はない訳です。しかし日向子さんはお孫さんですから、親族ではあってもこのままでは相続財産を受け取ることはできません。だからひと工夫が必要なんです。」
高木は声の調子を一段低くして、大吉に重大な内緒の話をするように、ささやきかけるように続けた。
「大将が遺言書をしたためて、この土地を日向子さんに遺贈する、と指示すればいいんです。そうすれば日向子さんは堂々と相続財産を受け取ることができます。」
(続く)