事前通知規定の抜け穴
2013/7/16 税制改正
7月の税務当局の人事異動も終わり、税務調査の依頼の電話がかかってくるようになりました。
今年から国税通則法の改正とともに、当事務所の顧問先に対する税務調査前の事前通知は例外なく行われています。 ところが報道によると、この事前通知を行うかどうかについて、課税庁側に有利な抜け道が用意されており、これを使うかどうかは各税務署の「姿勢」にかかっているのだそうです。
国税通則法の事前通知の規定には、「税務署等が保有する情報から、事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、または調査の適正な遂行に支障をおよぼすおそれがあると認められる場合」には、事前通知せずに税務調査ができる旨が書かれています。 この規定を根拠に過去に申告漏れや書類不備が指摘されたケースなどは事前通知が省略される事案が発生しているそうです。
せっかくの法改正を空洞化させるような行政実務は厳に慎むべきであると思いますし、国税通則法に拠った対抗策も検討しておかなければならないと考えます。
買換え特例の縮小の影響
2013/3/12 税制改正
所有期間10年超の事業用 土地・建物・構築物を売却して、新たに土地、建物、構築物機械装置を購入した場合、売却益課税を繰り延べる「9号買換え」という制度があります。
10年超保有していれば大きなしばりもなく税負担を軽減した買換えができるため、重宝がられて使われてきました。税務に明るい経営者ならば「事業用で10年保有していれば買換え特例がきく」というのが常識でもありました。
ところが平成24年度税制改正で、新しく買換える資産のうち「土地」については、地積が300平米以上なければ特例の適用ができなくなってしまいました。
一方、平成23年の改正で法人の「立体買換え」(デベロッパーに土地を売却し、その土地上の建物と土地を代替資産として区分所有するような取引で、等価交換などとも言われる)
の特例が使えなくなったため、逃げ道として「9号買換え特例」が使われてきた経緯もあります。
ところが土地の300平米要件が入ってしまうと、立体買換えで土地を区分所有する場合、9号買換えの要件を満たさないケースが大幅に増えてしまいます。
新規に取得する「建物」部分には「9号買換え特例」は使えますが、土地はアウトということになってしまうのです。
地方の土地を売却し、都心の狭小地に節税目的のマンションを建てても、9号買換えの特例でしばりがかけられる、といふうに平成24年改正の際、解説されていましたが、法人の立体買換えの逃げ道がふさがれてしまう、という問題も引き起こしています。
不動産市況が活発化し、再開発事業なども展開される中で、企業や事業を行う個人の「打ち手」が少なくなっています。
自民党税制調査会の本格始動
2013/1/09 税制改正
自民党税制調査会は7日総会を開催し、9日に各部会からのヒアリングを行い、10日、11日に主要項目について検討することを確認しました。
所得税・相続税の見直し、事業承継税制、金融証券税制が主要な論点になると言われています。
7日総会のペーパーを見ても、気になる所得税、相続税の改正については、昨年3党合意の文言が掲載されているだけで、新しい情報を得ることはできませんでした。 10日、11日皮切りの議論で大きな方向付けが固まると思われます。
あらかじめアナウンスされていた研究開発税制の拡充は、11日に予定される緊急経済対策に盛り込まれる予定とのことです。
また日経新聞の情報では、給与を一定割合増加させたり、雇用者数を一定以上増加させた企業に対して、法人税の控除を行う減税制度を検討しているそうです。
平成25年度税制改正大綱は、1月23日をめどにとりまとめることが予定されています。
自民党も相続税増税に着手か
2012/12/30 相続税
安倍内閣組閣の翌日のニュースに、自民党も富裕層課税を検討し始めているというものがありました。
消費税率引き上げに伴い、富裕層にも所得税や相続税で相応の負担をしてもらおうという動きですが、自民党はこれまで相続税増税には強く反発していたはずです。
民主党政権時の、相続税にかかる基礎控除を4割カットというものではなく、3割や2割カットなどの「おとなしい改正」の自民党独自案を作成することを検討するようなのですが、それにしても 「話が違う」 感は否めません。
自民党税調の税制改正大綱は、来年1月下旬をめどに作成される予定です。
税調議論の過程などをオープンにする、民主党政権の残した良きプロセスは今後も継続してもらいたいと思います。
新国税通則法による調査手続の先行的取組
2012/9/18 税制改正
来年1月から、改正された国税通則法が施行されます。
これにより、更正の請求期間の延長、処分の理由付記、税務調査手続きの見直しが行われます。
課税庁では、これに対応するため長時間の研修を行うとともに、今年10月1日からの税務調査において、事前通知と修正申告の勧奨の際の教示文の交付を先行的に行うそうです。
国税庁HP 「税務調査手続等の先行的取組の実施について」↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/senkotorikumi.htm
税務調査の手続きにおいては、実地調査の開始日時、調査場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間、調査の対象となる帳簿書類その他の物件などを、納税義務者に対して事前に通知することが、法定されています。
また調査の終了に当たっては、国税に関する調査の結果、更正決定等を行うべきと認めた場合その調査結果の内容とその額を、納税義務者に説明するとされています。
10月1日から開始の調査に関しては、一部新制度に則った調査手続きを履行するとのことなので、この時点で税理士事務所も当局のひとつひとつの手続きの確認をすることが必要です。
また、納税者本人にも事前通知が必ず行われ、「事前通知事項の詳細」については、税理士事務所への説明のみでよいかどうかの確認も行われるようですので、この点も混乱がないように納税者への事前確認が必要と思われます。
消費税増税以外の抜本改革は先送りか
2012/6/07 税制改正
消費税率引き上げ法案に関する民主党と自民党との修正協議が、今月15日までに合意をめざす方向で進められています。
民主党が、低所得者層向け対策として打ち出している、「給付付き税額控除」制度に対して自民党は反対していることから、15日までの合意、21日国会会期末までの衆議院可決は、微妙な情勢です。
自民党からは、会期末まで残り僅かなことから、かりに消費税改正について合意をみたとしても、消費税以外の改正項目である所得税の最高税率引き上げや、相続税の基礎控除引き下げなどの税制抜本改革項目は、今年末の税制改正論議まで先送りするという見方が強まっているとのことです。
相続税改正については、自民党が強く反発していることから、かりに年末の論議に先送りされても、平成25年度税制改正に盛り込まれるかどうかは流動的です。相続税増税には所得間格差を埋め、消費増税を行うための環境整備をするという意味合いもあるのでしょうから、消費増税の決議のタイミングによっては、いっそう相続税制の改正のゆくえは、読めなくなると思います。
平成24年度減価償却制度改正のまとめ
2012/5/01 税制改正
法人課税について、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率が、原則として、定額法償却率の「200%」(改正前は「250%」)に見直されることになります。
また、この制度の適用に伴い、次の経過措置が設けられます。
1..平成24 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において取得した 減価償却資産について、改正前の「250%定率法」による償却ができるようにする。
2.「250%定率法」に基づいて減価償却を行っている資産については、今まで通り「250%定率法」により償却できるが、固定資産管理システムの修正の影響等により「200%定率法」を選択して減価償却を行った場合であっても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることを要件に当初の耐用年数で償却を終了することができる。
なお、個人に関しては、平成24年取得分に関しては250%定率法、平成25年度以後取得分から200%定率法が適用されます。
ちなみに、250%定率法の償却率が高すぎるので、3年の繰越欠損期間でカバーしきれず、定額法に変更したいというケースもあるようです。この場合、新たな償却方法を採用しようとする年の3月15日までに、変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。この提出には従前の償却方法を継続して「相当期間」が経過していなければならないとされ、相当期間とは3年とされています。
マイナンバー法と預金利息
2012/4/27 税制改正
マイナンバー法案について、同法案成立後少なくとも3年間は、預金利子について適用を見送るようです。
現在のすべての預金口座の利息について、支払調書を出し、これにマイナンバーをふることは、コストの面だけでも見通しが立たないためです。
ところで、マイナンバー制度の要諦のひとつに、消費税の「給付付き税額控除」があります。
低所得者に対して、消費税率の引き上げが生活を圧迫しないよう、還付も含めて税額控除を行う制度です。
この実施時期を、民主党のまとめた中間報告では、「少なくとも平成28年7月以降」としています。平成27年10月には消費税率10%を予定しているため、1年以内には低所得者に対する手当をしたいということだと思います。
しかし、預金利息がマイナンバー法の対象になるとしても、早くて平成30年1月からということですので、民主党のスケジュールでは預金利息がマイナンバーの対象でない時期から、給付付き税額控除制度が動き出すことになります。
多額の預金利息のみで生活している人に対して、税金の還付が生じる可能性もあり、新たに議論を呼ぶことが予想されます。
更正の請求期間の延長と留意点
2012/4/17 税制改正
マイナンバー法成立の見込み
2012/3/30 税制改正
社会保障分野や国税、地方税の賦課徴収のために、個人および法人に番号をつける、マイナンバー法案が今国会で成立する見込みが濃厚となっています。
法案によればマイナンバーの利用される範囲は以下の内容に厳しく限定されています。
① 社会保障分野での事務、税の賦課徴収および防災にかかる事務
② ①の事務の申請、届出を行う者の事務処理上必要な範囲での利用
③ 災害時の金融機関での利用
利用範囲が限定されるため、巷間心配されるような、個人所得と法人所得とを紐付けして課税の強化を図るということは、当局も意図していないようです。
ただし、個人番号は届出書、調書等に記入されるため、給与所得以外の資産から発生する所得の名寄せは容易になります。 これにより給与所得だけからは把握しきれなかった個人所得の全体像が明確に把握されることになります。
なお預金口座に関しては、調書にないことから、マイナンバー法の対象になるかどうか未定のようです。