法人オーナー課税とは何だったのか
2012/3/13 税制改正
平成24年度税制改正大綱では、給与収入1500万円超のサラリーマンの給与所得控除を頭打ちにするよう改正が予定されています。改正されれば平成25年分給与からの適用です。
平成23年度改正案に盛り込まれていた役員給与についての大幅縮減は、税と社会保障一体改革大綱からも抜け落ちているので、平成25年度税制改正で復活することもないでしょう。 以上は、既報のとおりです。
さて、そもそもの問題の発端となった「特殊支配同族会社課税」(平成22年度廃止)導入の裏話を聞くと、税務を「なりわい」としている者としては意気阻喪させられる思いです。
表向きは、新会社法導入に伴って、「法人成り」による過度の節税に歯止めをかけ、課税の公平をはかるというのが、オーナー課税導入の目的でした。
ところが、主税局の意向としては、あえて中小企業向けに厳しい税制を導入し、近い将来到来する消費税率引き上げに当たって、あたかもバーターのごとく、これを緩和することを、考えていたのだそうです。 つまり、消費税率引き上げの呼び水です。
本来所得税で調整すべきことを、法人税で調整するのはおかしいと、誰もが批判していたおかしな税制でしたが、仕掛けた当人(財務省)が、それを百も承知で導入していたようなのです。
国家百年の計を立てるために正確な歳入見通しを立てることと、歳入増のために持ち駒のように納税者を操ることとは、千里の隔たりがあります。
消費税率引き上げのような重要な事柄についての操作なら、なおさら罪は重いと思います。
マイナンバー法案の閣議決定
2012/2/15 税制改正
政府は昨日、社会保障・税に関わる共通番号制度に関する法案(マイナンバー法案)を閣議決定しました。
消費税増税に伴う、低所得者対策である「給付付き税額控除」を導入するならば、共通番号制度は欠かせないものでしょう。 一方で、国民に対する制度自体に対する周知不足と、プライバシー侵害への不安が、法案成立の大きなハードルになることは必至です。
ちなみにアメリカでは社会保障番号(social security number=SSN)が、事実上の国民識別番号として利用されています。 納税者番号、社会保障サービス受給番号としての利用に留まらず、運転免許証取得や更新、銀行口座の開設など、あらゆる場面で個人認証のための手段として使われています。
筆者はアメリカ滞在中、SSNで無作為に選ばれる「陪審員」に当たってしまい、大変な思いをしたことがあります。
わが国で共通番号制度を導入する場合、生体認証を組み込んで「なりすまし」などによる被害を排除することもあらかじめ検討しておかなければならないと思います。 生体認証には当然に「人権」の問題もかかわってきます。
難しい問題にいよいよ手をつけたという感がありますが、拒絶反応だけで議論自体を拒絶することは最も慎むべきことだと思います。