給与加算の学資金非課税
2016/6/15 税務最新情報
国税庁は5月30日付で、「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明を公表しました。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shotoku/h28tsutatsu.pdf
平成28年度税制改正では、給与所得者が通常の給与に加算して受ける学資金が新たに非課税とされています。本年4月1日以後に受ける学資金から非課税扱いとなりました。
クリニックで看護師さんなどに支給される学資金の扱いは、税務調査などで争点となるところでしたが、今回の通達改正で一応の決着を見ることになります。
今回公表された通達の趣旨説明では、通常の給与を減額し、その減額分を学資金として受けた場合は非課税にならないことを例示して、留意するよう呼び掛けています。
非課税制度の悪用をあらかじめ封じておく狙いですが、支給者側としては「本来の給与」と「学資分」とを給与規定などで明らかにしておく必要があります。
第6次医療法改正に伴う実務への影響
2016/6/13 医療法人・医療関係
平成26年度の第6次医療法改正のなかで、「医療法人の経営の透明性の確保」や「医療法人のガバナンスの強化」がうたわれていました。前者では公認会計士等による外部監査の必要が、後者では、MS法人との取引の都道府県への報告が実務上の課題となるため、政令の整備が待たれていました。
この3月25日と4月20日に厚労省の関係政省令が公布され、その全容が明らかになっています。
外部監査については平成29年4月2日からの施行で、一般医療法人に関しては負債50億円以上または収益70億円以上という、対象が広範に設定される結果となりました。
また、親族関係のあるMS法人との取引については、1千万円以上で費用総額の10%以上を占める取引について毎年の都道府県への報告義務が発生します。医療法人の役員又はその近親者(配偶者又はに親等内の親族)が代表者であるか、議決権の過半数を押さえていれば報告義務が生じますので、これも広範に投網をかけるような制度設計になっています。
財産債務調書の提出について
2016/3/12 税務最新情報
従来の財産債務明細書は、この3月15日締切の確定申告から、「財産債務調書」と名称を改められました。
提出義務者も「申告所得2,000万円超で、かつ、財産総額3億円以上、または有価証券1億円以上の者」とされ、対象者も従来より限定されています。
この調書を提出することによるインセンティブとしては、本来申告すべき不動産所得や利子所得、配当所得などの所得税または相続税などに申告漏れがあった時に、当該財産債務に関する過少(無)申告加算税を5%軽減する、ということになっています。
当面、相続発生はないと予想されるので、提出しないことによる実質上のデメリットはないのではと考える方もおられるかもしれません。
しかし、ここで注意したいのは、財産債務調書自体に質問検査権が認められていることです。
この調査に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をするなど検査を拒み、妨げ、忌避したときは1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すこととされています。
財産債務明細書のときと同じ感覚で提出せず、税務署から呼び出しがあっても放置していると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある、ということです。
調書を提出しないことによるリスクは、これまでの「明細書」より格段に大きいと考えていた方がよいでしょう。
直系親族間贈与申告の添付書類
2016/3/10 税務最新情報
この3月15日までに申告義務のある平成27年度贈与税申告書は、昨年までのものと大きく様式が異なっています。
直系尊属が、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)へ贈与をした場合に、特例税率が適用され負担が軽減される特例制度が導入されたためです。
なお、この特例制度を利用した贈与を行い、贈与財産額が410万円超の場合、「申告者の戸籍謄本または戸籍抄本」が必要になります。
同制度は選択制ではありませんので、直系親族間の贈与で受贈者が20歳以上の場合、410万円超の財産移転があった場合には、上記書類の添付は必須となります。
すでに申告が完了された方も、もう一度ご確認をお願いします。
一人っ子家族の数次相続
2015/10/19 相続税
一人っ子家族で、両親が相次いで亡くなった場合、例えば父が亡くなって相続財産が未分割なまま、母が亡くなった場合、不動産登記が従前よりも複雑になっています。
一人っ子が父の相続財産をすべて相続登記し、母の相続財産を引き続き相続登記するという従来認められていた方法は、昨年の東京地裁・高裁判決からできなくなっています。
まず、父の財産を法定相続分で母と一人っ子との共有財産としたうえで、母死亡後に母固有の財産と、いったん共有持分とした父親財産とを一人っ子が引き継ぐという段取りになるのだそうです。
子が複数の場合には、第一次・第二次相続のいずれの場合にも複数の相続人がおり、遺産分割協議が成り立つので、上記のような面倒な手続きは必要ありません。これでは判決の意図するところがわからず、司法書士さんにも大変不評な判決です。
判決全文→http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/478/084478_hanrei.pdf
税務上は「相次相続控除」という仕組みがあるので、結果の税負担は同一であるようにも見えますが、例えば第一次相続の財産が基礎控除以下であって、第二次相続の相続財産が大きな場合では、税負担に差異が生じるのではないでしょうか。
第一次相続ですべて子が相続しておれば、第二次相続の税負担が少なかったはずなのに、共有持分となってしまったばかりに、第二次相続の負担が大きくなるのではと思います。
税負担の平等という観点からも、手続きに見直しが必要ではないかと考えます。
本人交付用の源泉徴収票にマイナンバー記載なし
2015/10/13 所得税
10月2日国税庁より、本人交付用の源泉徴収票や支払調書などには、マイナンバーを記載しないよう取り決めた旨の発表がありました。
国税庁HP
↓↓↓
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/mynumber_gensen.pdf
源泉徴収票は住宅ローンをはじめ各種ローンの申し込みや、奨学金の申請、保育所への提出など、「民」への提出の機会の多いものです。
これらすべてについて、マイナンバーのマスキングを施すなどの措置がなく第三者が書類を提出すれば、「情報漏洩」に該当するところでした。
今回のマイナンバー不記載の決定によって、上記リスクは軽減されることになります。
本人交付用で記載が不要になるのは次の書類です。
・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
・上場株式配当等の支払に関する通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書
超富裕層に対する重点調査
2015/8/17 相続税
国税庁は現行事務年度から、東京、名古屋、大阪の3局にプロジェクトチームを設置し、資産規模の特に大きい「超富裕層」に対する管理を強めることにしています。
調査を行う上で指針となる「試行通達」をこの事務年度中(H27.7~H28.6)に示したうえで、来事業年度(H28.7~H29.6)から取り組む予定とのことです。
わずかに漏れ聞こえる情報では、A・B・Cに3区分された対象者により国税当局の対応が異なるという話ですが、その資産規模の分類基準などは公にされていません。
なお、この試行通達は国税局のHPなどで公表させることのない、完全な内部文書扱いになる予定とのことです。
平成27年路線価公表される
2015/7/03 相続税
1日の路線価発表に伴い、相続税のご依頼を受けているお客様に、財産評価の変更点をお知らせしました。
福岡市内では、最高値の中央区天神2丁目が5.6%の伸びを見せており、再開発の進む博多駅前2丁目(駅前通り)で9.8%増という大きな伸びが見られます。
市内中心部については、商業地、住宅地に係らず堅調な伸びですが、今回ご相続案件の物件を見ていて、さほど人気スポットともいえない住宅地区も5%~6%の伸びを見せているところが目立ちます。
東京資本の福岡都心部への投資が熱を帯びる一方、過熱気味であるという共通認識も芽生え始めており、いったん冷却させる動きが出てくるかもしれない、とのメディアでのプロのコメントも見られました。
認知症対策としての贈与信託
2015/7/02 相続税
「結婚・子育て支援信託」や「教育資金贈与信託」は俗に「税理士いらず」とも呼ばれ、税理士の評判が極めて悪い制度です。
これは単に職域を荒らされるといった単純な理由からではなく、我々に任せてもらえれば、もっとタイムリーかつ効果的な贈与計画が立てることができるし、途中でよりよい制度への切り替えもできるのに、という税理士の「歯がゆい思い」からです。
それでも、なぜ納税者がこの制度を選択するのかといえば、言うまでもなく信託銀行の信用力があるからでしょう。
そしてもうひとつ、財産を残す側が「認知症」になって成年被後見人になってしまった場合、相続対策として打てる手が全くなくなってしまうからでもあります。
判断能力があるうちに、打てる手はすべて打っておきたい、そのためには複数の相手にまとまった金額を移転できる制度を最大限利用しよう。財産を残される側の気持ちとしては痛いほどわかります。
先般、家庭裁判所から専門職後見人に任命され、「成年後見支援信託」を開設するお手伝いをして、認知症の資産家を親族に持つ方のご苦労を、身近に経験しました。また本人の判断能力さえあれば、打つ手はいくらでもあるのに、という悔しい思いを生で聞く機会を持ちました。
我々税理士も、かりに元気な資産家からのご相談であっても、本人の判断能力は永遠に健在ではないという事実に立ち返って、アドバイスをしなければならないと痛感するところです。
医療法人の出資持分放棄に伴う贈与税
2015/6/29 医療法人・医療関係
医療法人の出資持分を、出資者全員が放棄し、相続税法66条4項に照らして贈与税が課せられるとして、その場合の贈与税課税の対象額がいくらになるのか。
たとえば出資金相当額を「基金」に振り替えるとして、その出資金相当額が課税対象になるのかどうかについて、明文での説明がなかなか見いだせないため、実務家の判断を迷わせるところです。
平成26年1月23日付 厚生労働省医政局指導課事務連絡のなかのQ2に実務上の判断が詳しく載っています。
↓ ↓ ↓
下記アドレスに掲載
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000035432.pdf
出資金相当分は贈与税の課税対象から外されるというのが正解です。
厳密な法解釈上は、問題ありなのかもしれませんが、これは課税庁とのすり合わせ済みの文書であることも付言されています。