福岡市の税理士 税理士法人 福岡中央会計税務最新情報

分掌変更による退職金の裁決事例

2013/7/19 法人税

会社創業者など事実上会社をけん引してきた人物が、代表権を返上し平取締役などに就任する際、退職金を支給するケースがあります。 これを「分掌変更による退職金の支給」と言います。 代表権を返上すること、非常勤になること、給与は従前のおおむね半分以下にすること、重要な経営方針決定に関与しないこと、などの厳しい要件をクリアしてはじめて退職金の損金算入がみとめられます。 先日、国税不服審判所の裁決で、納税者にとって厳しい判断が示されました。 非常勤役員となった元代表者は、給与も3分の1程度に減額し、経営判断の根本に関わるアドバイスも行っていなかったといいます。おおむね上述した損金算入の要件を満たしているとも考えられる事案だったようです。 課税庁はこの元代表者が、主力商品の製造管理に関する技術指導を行っていたこと、会社の発行済株式の半数以上を所有していたことから、会社において重要な業務を行い、影響力ある地位を占めていると認定し、退職金を損金不算入としていました。 不服審判所も当局の見解を支持しています。 主力商品の製造管理のアドバイス行っていたとしても、それは熟練者が後継指導をしていたと考えれば、退職後の行為として妥当ではないかとも考えます。また会社に対する影響力をはかる基準として持ち株比率を持ち出すのは、いたずらにハードルを引きあげる判断ではないかと考えます。 経営の根幹にかかわっているかどうかは諸事情を総合判断しての結論であるとは思いますが、報道されている範囲内では納税者に酷な判断であるという印象を持ちました。

小規模企業に対する課税強化の可能性も

2013/2/04 法人税

税制改正大綱のなかで注意しなければならない項目に「検討事項」があります。 最後に付け足しのように書かれているものの、今後の税制改正では俎上に上げるというメッセージ性の高い内容です。 平成25年度税制改正大綱には次のような文言が見られます。  「小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業者、同族会社、給与  所得者の課税のバランス等について、幅広い観点から検討する」 悪名高い「特殊支配同族会社課税制度」は、自民党時代に制定され批判によって縮小されながら、民主党政権時代の平成22年に廃止された経緯があります。 これとバーターするようなかたちで、給与所得控除の「頭打ち制度」が導入されて、同族会社の役員に対する課税問題は一段落したものと考えられていました。 自民党政権下では、この問題はまだ未解決であり、課税強化も検討するという認識であることのアナウンスです。 今後の税制改正の議論の中で、要注意の事項です。

税務署も見識を試されている

2012/9/07 法人税

今回も法人税調査事案です。 調査対象先企業は、節目の創立記念にあたり、従業員および取引先に記念品を贈呈しました。 この記念品の価額が高額で、現物給与に当たるのではないかという指摘です。 税務上のトラブルが発生しないように、処分価額が1万円を下回ることを確認していましたので、その資料を税務署に持参すると、今度は次の事例に該当するのではないかと指摘を受けました。  自由に選択できる永年勤続者表彰記念品(国税庁HP)↓  http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/03/07.htm これは記念品について、文字通り「自由に」これが欲しいと希望できる場合の取り扱いを、照会事例として掲げたものに過ぎません。 調査対象法人は、4種類の記念品からの選択という方法を採用していましたが、授与者の希望通りの品物を贈呈することはしていません。 税務署の指摘は、文理解釈上の技術的な誤りではなく、端的に日本語読解力の欠如のなせるわざです。 もともとの記念品が現物給与に該当するという指摘にしたところで、通達の本旨は、儀礼的な要素の強いものであるから課税しない、ただし歯止めはかけるというものだと思います(法基通36-22)。 1万円という金額も、まったく恣意的に通達レベルで定められたものにすぎず、「お上に逆らうと煩いから」、やむなく納税者も配慮しているのが実情ではないでしょうか。 「税務の常識は一般の非常識」の例は、枚挙に暇がありません。 何でもよいから指摘してみて、課税できれば結果オーライという姿勢が露骨に過ぎるように思います。税務署もその見識を試されていることを心すべきでしょう。

税務調査の顛末

2012/8/17 法人税

法人税調査で、役員所有土地への法人地代復活を、「利益調整なので否認したい」と税務署が主張してきた件の顛末です。 地代支払い復活について、税務署側の主張が誤りであることを、しぶしぶ認めたのですが、地代の額が「適正ではないと感じる」ので、否認したいと主張してきました。 価額が適正でないという根拠も薄弱なまま、「何でもいいから、なんとかこちらの顔を立てられないか」という言いぐさです。 地代の額を改めて計算すると、いわゆる「通常の地代」の額に該当します。地代の額の根拠を示すと、すごすごと主張を撤回しました。 高齢の、濡れ落ち葉のような調査官の物言いならば、哀れも感じるところですが、まだ年齢も若く、現場の税務職員の模範として自らを律すべき統括官の、これが反応です。 現場の士気も落ちるでしょう。 怒りを通り越して、税務行政の行く末を案じさせるような一件でした。そして、ひょっとすると、このような滑稽な主張を繰り返すのは、それにおとなしく屈している税理士の存在が、原因としてあるのではないか、とも考えました。

税務署は空洞化しているのではないか

2012/7/26 法人税

前回ご紹介した、法人の支払地代をめぐる税務署の反応の続きです。 統括官が税務署に来るよう連絡してきたので、担当者に税務署に向かわせました。 担当者の報告では、支払地代を復活したのは「利益調整だ」と統括官は主張して譲らないのだそうです。 法人取引である以上、適正地代支払いを基準として、課税関係の判断をするべきだと、いくら主張しても理解できないといいます。40代の若い統括官だったというのですが。 そういえば別の調査で、不動産管理会社がマンション所有者から受け取る「管理料」が、どのような役務の対価なのかと若い統括官に真顔で聞かれて、彼の真意を測りかねたことを思い出しました。本当に管理料が何かを知らなかったようです。 これも2カ月ほど前の出来事です。 団塊の世代が退職したあとの税務署は、「空洞化」しているのではないでしょうか。 「これを喋ると程度が知れる」「のちのち組織全体が恥ずかしい思いをする」という判断は現場で恥をかいて、先輩にしかられて身に付く知恵だと思います。 今回のケースも、つまらない指摘をした担当調査官が署に帰って統括官にしかられて、恥をかくべき事項のはずです。 猛省を促したいと思います。

税務署員の質の向上を望む

2012/7/23 法人税

税務調査の立会をしていて気がつくことのひとつは、調査官の年齢が非常に低くなっていること。経験も少なく知識も充分ではない調査官が、ひとりで調査の現場にやってくることです。 顧問先企業も我々税理士も、忙しい時間をようやく割いて調査に協力しているのですから、手際よく、納税者に負担をかけない調査を望みたいところです。 しかし、調査官から次のような指摘を受けると、怒る気力も失せてしまいます。 会社「甲」は役員「A」所有の土地に会社所有の建物を有し、かつてはAに地代を払っていました。ところが業績の悪化により地代を支払う余裕もなくなり、地代支払いをストップする時期がしばらく続きました。 調査対象年の最終期に、ようやく業績が好転しだしたため地代の支払いを再開したところ、これを法人税の調査において調査官は、「利益調整であるため否認したい」と主張します。 税務署および調査官の名誉のために名は伏せますが、先週の調査でそのように主張し今日に至るまで主張の撤回がないということは、統括官クラスも同様に考えているということだと思います。 法人はあくまでも経済合理性を追求する主体であり、税務上の解釈もそこを出発点とします。使用貸借の関係が発生しているならば、あるいはそのような契約があるならば、それは「仮装契約」とみなして税務上の判断を行うはずです。あくまでも、適正地代の収受が行われるべし、というところから議論はスタートします。 過大な地代支払いがあった場合には、役員給与の指摘が検討されたり、逆に法人地主が受取地代を収受していない場合には、受取地代の認定課税がされたり、というのは以上のような前提で構成される理屈です。 むろんAの個人所得の問題も発生しますが、これはあくまでも別問題。また借地権利金収受の慣行のない地域ですので使用貸借に伴う煩わしい税務の問題も発生しません。 税務署員の質の向上を切に望みます。納税者が税務署員の不勉強に振り回されることがあってはならないと思います。

メディカル・サービス法人との取引の適正性

2012/6/13 法人税

医療法人の理事とMS法人の役員との兼務について、厚労省から通知が出ていることは、既報のとおりです。 今後、医療法人成りの手続等で、神経を使わなければならないところだと思います。 医療法人とMS法人との商取引の適正性についても、通知文書は言及していますので、今一度、契約内容の他社比較などを行ってみることが必要でしょう。 ところで契約内容の適正性については、興味深い判決が出ていますのでご紹介します。 医療法人が、コンタクトレンズ販売会社であるMS法人に対して支払った広告宣伝費について、東京地裁は広告宣伝費が、「寄附金」に該当する判断を下しました。 眼科診療所を経営する医療法人が、関連会社の新聞折込チラシ等の宣伝費用について、費用を一部負担していた事案で、その折込チラシ等について医療法人の名称等の記載がない等の理由から、医療法人の負担費用を税務署が寄附金と認定した更正処分を適法と判断しています。 MS法人の経費ではあっても、医療法人が負担すべき筋のものではないという判断です。 同一ビルに医療法人とMS法人が同居している場合など、MS法人の宣伝が事実上医療法人の宣伝の「効果」を見込める場合であっても、医療法人の広告宣伝という体裁を取らなければ医療法人の経費性は認められないと考えなければなりません。  厳しい判断だと思います。

日本商工会議所を経由した資産の無償譲渡

2012/5/16 法人税

日本商工会議所では、東日本大震災による津波などで機械等を流失・損壊した事業者の復興支援を図るため、全国各地の事業者から遊休機械等を無償で提供を受け、被災事業者の要望とのマッチングを行う「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」を実施しています。 日本商工会議所HP↓ http://www.jcci.or.jp/region/tohokukantodaisinsai/matching/ 通常、有休資産等を無償譲渡した場合は税務上、時価相当額について寄附とされますが、被災者のための資産等の無償提供は、取引先であれば寄附等には当たらないと定められました。 これに加えて、冒頭の日本商工会議所主催「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」に応じて取引関係のない企業に、資産を無償で提供した場合には「広告宣伝費」として損金算入が可能となる、とのことです。 なお資産の評価は、再取得価額を基礎にした「時価」にて算定することになります。

9号買換え特例関係の政令が公布される

2012/4/09 法人税

平成24年度税制改正で、「長期所有土地、建物等からの買換え特例」(9号特例)の対象となる買換資産のうち土地についてその範囲を限定するよう変更がなされています。 改正により、事務所等の一定の建築物等の敷地の用に供されているもので、面積が300㎡以上のものに限定する見直しが行われましたが、「一定の建築物等」の詳細については政令に委ねられていました。 3月31日付官報で公布された政令で、この一定の構築物等の内容が明らかにされています。 これによると、「事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く)」と規定されています。 また、駐車場として利用されており、「建物又は構築物の敷地の用に供されていないことについて政令で定めるやむを得ない事情があるもの」に宥恕規定が設けられていますが、「やむを得ない事情」について政令は次のように定めています。 1)都市計画法第29条第1項又は第2項の規定による許可の手続、 2)建築基準法第6条第1項に規定する確認の手続、 3)文化財保護法第93条第2項に規定する発掘調査、 4)建築物の建築に関する条例の規定に基づく手続き(建物又は建築物の敷地の用に供されていないことが当該手続きを理由とするものであることにつき国土交通大臣が証明したものに限る)その他の行為が進行中であることにつき財務省令で定める書類により明らかにされた事情 つまり、駐車場として利用している場合には、開発許可申請を行っており、許可がおりるまでの間等、まさにやむをえず利用するようなケースのみを想定しており、通常の駐車場への買い換えは事実上、「不可」と考えざるを得ません。

役員給与に関するQ&Aに「業績悪化」説明追加

2012/4/05 法人税

国税庁は、「役員給与に関するQ&A」に、「業績の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額」を付け加えています。 国税庁HP↓ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf これによると、現状では数値的指標が悪化しているとまでは言えないものの、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には、業績悪化改定事由に該当する、という判断が可能とのことです。 また、今後著しく悪化することが不可避と認められる場合であって、これらの経営改善策を講じたことにより、結果として著しく悪化することを予防的に回避できたときも、業績悪化改定事由に該当するという説明を付け加えています。 経営状態が明らかに悪化して、初めて役員給与引下げなどの手段を講じるのでは、経営判断として遅きに失しているのは明白です。 手段を講じなければ悪化することが明らかであること、手段を講じることによって結果的に悪化を免れることができたことは、いずれも業績悪化改定事由に該当するのは、当然だと思います。 Q&Aは至極、常識的な判断を付け加えたものと考えます。
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