平成24年度減価償却制度改正のまとめ
2012/5/01 税制改正
法人課税について、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率が、原則として、定額法償却率の「200%」(改正前は「250%」)に見直されることになります。
また、この制度の適用に伴い、次の経過措置が設けられます。
1..平成24 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において取得した 減価償却資産について、改正前の「250%定率法」による償却ができるようにする。
2.「250%定率法」に基づいて減価償却を行っている資産については、今まで通り「250%定率法」により償却できるが、固定資産管理システムの修正の影響等により「200%定率法」を選択して減価償却を行った場合であっても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることを要件に当初の耐用年数で償却を終了することができる。
なお、個人に関しては、平成24年取得分に関しては250%定率法、平成25年度以後取得分から200%定率法が適用されます。
ちなみに、250%定率法の償却率が高すぎるので、3年の繰越欠損期間でカバーしきれず、定額法に変更したいというケースもあるようです。この場合、新たな償却方法を採用しようとする年の3月15日までに、変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。この提出には従前の償却方法を継続して「相当期間」が経過していなければならないとされ、相当期間とは3年とされています。
マイナンバー法と預金利息
2012/4/27 税制改正
マイナンバー法案について、同法案成立後少なくとも3年間は、預金利子について適用を見送るようです。
現在のすべての預金口座の利息について、支払調書を出し、これにマイナンバーをふることは、コストの面だけでも見通しが立たないためです。
ところで、マイナンバー制度の要諦のひとつに、消費税の「給付付き税額控除」があります。
低所得者に対して、消費税率の引き上げが生活を圧迫しないよう、還付も含めて税額控除を行う制度です。
この実施時期を、民主党のまとめた中間報告では、「少なくとも平成28年7月以降」としています。平成27年10月には消費税率10%を予定しているため、1年以内には低所得者に対する手当をしたいということだと思います。
しかし、預金利息がマイナンバー法の対象になるとしても、早くて平成30年1月からということですので、民主党のスケジュールでは預金利息がマイナンバーの対象でない時期から、給付付き税額控除制度が動き出すことになります。
多額の預金利息のみで生活している人に対して、税金の還付が生じる可能性もあり、新たに議論を呼ぶことが予想されます。
国税庁、相続税申告事績公表
2012/4/26 相続税
国税庁は、平成22年分の相続税申告事績を公表しました。
公表の対象は、相続税額のある申告書で、平成23年10月31日までに提出されたもの及び震災特例法により申告期限が24年1月11日まで延長が認められた被災者が提出したものを合わせたものです。
これによると、被相続人数は過去最高となる119万7千人で、このうち相続税の課税対象被相続人数は約5万人、課税割合も4.2%と0.1ポイント微増しています。 また課税割合が増加するのは3年ぶりとなるそうです。
つい最近まで、被相続人の数はおおむね百万人と考えていました。 これがあっという間に120万人に到達し、2025年には170万人にまでふくれあがると言われています。高齢化社会への本格的な突入を実感する数字です。
課税割合は微増しているようですが、税額そのものは前年度を割り込んでいるので、財産を「広く浅く」保有する分布に変わってきているのかもしれません。
相続税の改正がかりに行われ、基礎控除が大幅に引き下げられると、課税割合は当初予想よりも大きくなるかもしれませんが、税収もさほど見込めない可能性があります。
平成24年税制改正における相続税改正
2012/4/23 相続税
平成24年度税制改正法案は国会を通過していますが、この中に平成23年度税制改正大綱に盛り込まれていた「基礎控除の引き下げ・税率構造の見直し」は、含まれていないので注意が必要です。この点誤解をされておられる方が多いようです。
相続税の基礎控除の引き下げは「社会保障と税の一体改革法」に謳われており、これが成立すれば平成27年1月1日以後発生の相続から適用になります。 平成23年度税制改正大綱に盛られたスケジュール(平成23年4月以後相続適用)からみれば、だいぶ先延ばしの日程ではありますが、自民党などの強い抵抗が予想されています。消費税率引き上げとのバーターでまた先送りというシナリオも考えられます。
ところで、平成24年度税制改正では、一定の要件のもとで相続税の「連帯納付義務」は解除されることが、ようやく実現しました。
①申告期限等から5年を経過した場合、②納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合には、未納の相続人分の相続税を他の相続人が連帯して納付する義務が解除されます。
納税者にとっては吉報です。
マイナンバー法の資産税への影響
2012/4/19 相続税
マイナンバー法のもたらす影響について何度か触れてきましたが、相続・贈与税への影響に関しては、現状ではさほど大きくないとの予測が立てられています。
マイナンバー法は、支払調書の提出が義務づけられているもの、すなわち「所得」の捕捉に関しては大きな影響を及ぼすものとみられます。
たとえば非上場株式の配当など、マイナンバー法によって名寄せされる予定ですので、配当所得の申告漏れなどはなくなって行くのでしょう。
しかし、個人間の非上場株式の譲渡など、支払調書の伴わない所得の捕捉には役立たないことになります。
また、調書の伴わない「資産」の把握は基本的にマイナンバー法の「枠外」と捉えて良いようです。
ただし、前述の非上場株式の配当に係る支払調書によって、「非上場株式の所有」そのものは捕捉されるので、相続等で申告漏れを指摘される機会は増えてゆくと考えられます。
持分のない医療法人へ移行時の贈与
2012/4/18 医療法人・医療関係
昨年の国税不服審判所裁決のうち、医療法人に対する贈与に関するもので、興味深い事例が公表されています。
定款変更によって持分の定めのない医療法人に組織変更した法人が、土地の寄付を受けました。課税庁は、これを医療法人の受贈益として更正処分を行ったのに対し、納税者は医療法人の設立の際に贈与を受けた資産に該当するとして、法人税施行令136条の4を根拠に、益金不算入を主張していた事案です。
これに対して審判所は、法令の趣旨を解釈したうえで、納税者は医療法施行規則に基づいて、定款変更の方法で「持分の定めのない医療法人」へ組織変更したものであり、従前の医療法人の解散、清算の手続きを経た上で新たに設立されたものではないから、法人税法施行令136条の4の規定を外れると判断しました。 医療法人に対して受贈益課税が発生するという判断です。
妥当な判断だと思います。
持分のない医療法人には、出資評価に伴う相続税の心配がないことから、節税目的で医療法人への財産移転を図るケースは今後、絶えないのではないかと思います。税務上の問題のみならず、ケースによっては安定的な事業承継のありかたとしても、問題があると考えます。
更正の請求期間の延長と留意点
2012/4/17 税制改正
一般法人に移行後の予算案承認決議
2012/4/16 その他
この4月から、一般社団法人、一般財団法人として再スタートを切られた法人は、初めての一般法人としての総会のあり方に、戸惑われておられると思います。
多く寄せられる質問は、事業計画および収支予算案は、総会の決議事項なのかどうかというものです。多くの一般法人で予算案の総会承認を得ているケースが多いようなので、確信が持てないのだそうです。
一般法人の標準規定は、社員総会の決議事項とはなっていません。従って、基本的に理事会承認と考えて良いようです。しかし定款で事業計画および予算案を総会の決議事項としている法人も多いようなので、定款の確認が必要です。
また定款で総会の決議事項としていない一般法人であっても、理事会の承認を得たうえ総会で報告事項とする、などの配慮は必要と考えます。
新設法人の50%超保有者に関する情報収集
2012/4/13 消費税
消費税法等の一部改正案が成立した場合、新設法人の消費税免税制度について、新しい規制が設けられることについては、すでにお伝えしました。
新設法人を、直接間接に50%超保有する事業者の課税売上高が ①5億円超である場合、②5億円以下であっても、その50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円超であった場合、当該新設法人に免税点制度が適用されないという点が注目されています。
改正法案では、新設法人が50%超保有する事業者に対して、課税売上高が5億円を超えるかどうかの情報提供を求めた場合、情報を求められた事業者はこれに答えなければならない旨、定められています。
ただし、財務省によると、この情報提供に対する具体的な方法や手続などを財務省令等で明らかにする予定はないということです。
同族関係など、情報収集をしやすい関係であるからという理由でしょうが、課税売上5億円超の判定等は納税者に下駄を預けたかたちになるようです。
マイナンバー法にともなうコスト負担
2012/4/12 その他
今国会で成立する予定のマイナンバー法によって、上場・非上場株式等の配当、譲渡にかかる所得が名寄せされることを、前回お伝えしました。
上場株式については、証券保管振替機構(ほふり)が管理する台帳に、番号を振ることになると考えられますが、このコストを誰が負担するのかという問題が残っています。
株主のマイナンバーを確実に把握し、間違いなく税の捕捉につなげるためには、相当の労力と注意義務が必要と考えられます。
このコストを「ほふり」が単独で負担することは困難と考えられるため、結果として株式の発行体(企業)が負担するものと予想されています。
株主数が相当数に及べば、極めて大きなコストを覚悟しなければならないと考えられます。
また、非上場会社においても、事務作業の負担は計り知れないと予想されます。